おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由(中島 聡著)を読みました。読んだ記録としてのエントリーです。
この本の中で一番面白い部分は古川さんとの対談(第3章 特別対談 PartII 古川 享 私たちがマイクロソフトを辞めた本当の理由)。なぜって?、若かりし頃の中島さんのスリリングなソフトウエア開発の経験が読めるから。若かりし頃の中島さんってAppleのファウンダーのSteve Wozniakとだぶる部分があって、僕がSteveのBiography本「 iWoz」を読んだときに感じたエンジニアとしての興奮を、2人の対談から感じました。多分、アスキー時代、日本マイクロソフト時代の中島さんは、Steveがゲーム作ったり、AppleIIを作っていた頃の日本版Steveみたいな人だったのだと思います。推測ですが。マイクロソフト本社時代は、AppleのMacチームのコアメンバーとして、MacのUIとか作っていたAndy Hertzfeldみたいな存在だったのかなーと思いをめぐらせています。(Andyに付いての知識はRevolution in The Valley
からです。)二人の対談を読んでいると、アメリカでのソフトウエア開発のエキサイティングな歴史を読んだ時と同じような、興奮が得られます。
話は飛ぶのですが、僕は2chユーザーでもなく、ニコニコ動画ユーザーでもありません。その為かも知れませんが、西村博之さんってどんな人かなって興味は持っていたのですが、この人を理解したいとか今日まで思ったことはありませんでした。その西村さんとの対談が、PartI 西村博之 ニコニコ動画と2ちゃんねるのビジネス哲学としてこの本には収録されています。西村さんの意見は中島さんの意見が普通に思えてしまうくらい、変わっていて面白いです。裏の裏を読んでいるような意見。結果として普通の人が考えている事と同じ結論になったりするのですが。たとえば普通の人はマイクロソフトはWindowsやOfficeを開発販売していいて凄い、儲かっていて凄いと考える。中島さんは、マイクロソフトは、スタートアップのように迅速に動けないから、ちょと今後はどうかなー?と言った意見。Paul Grahmに限ってはMicrosof is Deadと彼のエッセイに書いている。僕なんかは中島さんの意見やPaulの意見に影響を受けている層。でも西村さんはその上を行く。上かはどうかは分からないが、ぜんぜん違った意見。
西村 (前略)たとえば、死に物狂いで働かないともたない会社と、午前9時から午後5時までダラダラ仕事をしていても利益の上がる会社って、どちらに価値があるかといえば僕は絶対に後者だと思うんですよ。肉体労働しないと利益が生まれない構造と、賢い人が仕組みを作って肉体労働しなくても利益が生まれる構造のどちらがいいかといえば、仕組みで利益を生む構造のほうがいいじゃないですか。そういう意味では僕は、マイクロソフトはそんなに悪い会社だと思わないですけどね。
中島 そうか、そんな考え方もあるか。
(Page 131)
西村さんの、一般的な結論を、一般的とは違った方向から導いてくる、ユニークさに彼の頭の良さを感じた。
もう一つ「おもてなし」に付いて、
(前略)技術を極めた先にあるもっと大切な差別化要因が、実は機能の豊富さや知的財産ではなく「おもてなし」である、というのが本書である。 (Page 4)
「技術を極めた先にある…」の部分に僕は、「おもてなし」の前に中身がすばらしいのは成功の為にはあたりまえと書いてあるように読めた。いくらウエイターやウエイトレスのサービスの良いレストランでも料理がまずかったら僕は行かない。今の時代、「提供する中身が良いのは成功の為の必要条件、おもてなしは十分条件」と思うのだがどうでしょうか?
この本は、なぜ僕が中島さんのブログLife is beautifulを読む事が好きなのか分った本でした。
次は、ペア本の「パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本」を読みます。